生前贈与
相続対策のうち節税対策は税制改正の影響を受ける可能性があるため不確実性があります。
しかし、暦年贈与による節税対策は、その年その年の税制により課税関係が完結するため改正の影響を受けません。
アパート建築による節税対策のように一気に多くの節税効果は見込めませんが、長い期間をかけて暦年贈与を繰り返すことによる節税対策は低いコストとリスクで大きな効果を生むことが可能となります。
贈与をする場合の留意点
贈与による相続対策をする場合には、その贈与が実際にあったのかどうかが問題となってくることがよくあります。
贈与をした人が贈与した財産を管理しているような場合や、贈与を受けたはずの人が贈与があった事実を知らないような場合には、名義預金とみなされます。
名義預金はあくまで、その名の通り名前だけであるため、贈与の時効という概念もありませんので当然に相続財産とみなされます。
贈与がなかったとみなされないためにも十分な注意が必要です。
��契約書や口座間の移動により証拠を残す
贈与の事実を明らかにするためにも、贈与契約書を作成し、金銭贈与の場合には贈与を受ける人が管理している口座に振込むことにより証拠を残すようにしましょう。
よく、贈与税の申告を毎年しているから大丈夫、というお話を聞きますがあくまでも贈与の実態があったかどうかがポイントとなってきます。
��贈与財産の管理は贈与を受けた人が行う
贈与があったかどうかの判断において一番重要となってくるのが、贈与財産の管理処分は誰が行っていたかということになります。
銀行の口座だけ渡しておいて、印鑑は持っていないような状態では、贈与財産を処分（使う）することができないので、贈与とは認められない可能性があります。
暦年贈与による節税効果
暦年贈与は110万円の基礎控除があります。つまり、毎年110万円以下の贈与であれば贈与税もかかりませんし、贈与税の申告も必要ありません。
しかし、ある程度財産額が大きくなってくると毎年110万円だけ贈与ではいつ起こるかわからない相続に対する相続対策としては効果の薄いものになってしまう可能性があります。
そこで、財産額が多い人（相続税の税率が高い人）は毎年の贈与税を払いながら、対策をしていくことをお勧めいします。
贈与をしていく金額の基準として次の金額を参考にしてください。
��毎年310万円の贈与
310万円の暦年贈与に対しての贈与税は20万円です。実効税率としては6.4％となります。
��毎年470万円の贈与
470万円の暦年贈与に対しての贈与税は47万円です。実効税率としては10％となります。
この実効税率がポイントとなってきます。
たとえば、現状の財産額で相続税の税率が50％の人が2人の相続人に対して470万円の贈与を10年繰り返した場合（合計9,400万円の贈与）の税金負担の差額は下記のようになります。
| 贈与なしの相続税負担 | 贈与ありの贈与税負担 | 税金負担差額 |
|---|---|---|
4700万円 |
940万円 |
3760万円 |
ご覧のように、実効税率の差額を利用して贈与し続けた場合には年月を経てこれほどの差額が出てくるのです。
贈与する財産の種類
| 財産の種類 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| 不動産 | 持分にて移転で、分筆をする必要がない。 | 登録免許税、不動産取得税、司法書士手数料の移転コストが高い。 |
| 現金預金 | 移転コストがかからない。 | 贈与を受けた人の金銭感覚が狂う可能性がある。 |
| 自社株 | 換金性がないため金銭感覚が狂わない。 |
会社を引き継ぐ人を決めておく等の争族対策が事前に必要。 |
生前贈与加算の対象者以外への贈与
相続税法においては相続開始以前3年以内に行われた相続人に対する贈与は、相続財産に組み込まれてしまうため、贈与の効果がなくなってしまいます。
逆に考えると、相続開始以前3年以内に行われた相続人以外の人に対する贈与は相続財産に加算されないため、孫に対する贈与によりこの制限をクリアすることができます。
